あなたには「私はこれの熱狂的なファンだ!」と思えるものはありますか?
そちらには共感している「考え方」みたいなものが存在しないでしょうか。
この時代にブランドが商品やサービスを売っていく、ファンを作っていくにあたって意識すべきなのは、そのブランドの持つ「考え方」や「価値観」に共感してもらうことです。
今回は、既に提唱されている「グッズドミナントロジック」や「サービスドミナントロジック」の派生概念として「シンパシードミナントロジック」としてまとめてみました。
この概念を知ってマーケティングに携わると頭が整理されると思うので、ご活用いただけると幸いです。
目次
「シンパシードミナントロジック」を意識すべき時代背景
まずは、この概念を意識すべきだと思った理由である時代背景について説明します。
「心の幸せ」を本格的に求めだしている時代
「マズローの欲求段階説」に当てはめると分かりやすいのですが、人の欲求はもう多くの人が「自己実現の欲求」や「自己超越」まで来ています。
当然、「物質的欲求」だけでは満たされません。
何か自分のできることで誰かのためになりたい、誰かを幸せにしたい(隣人愛)と思っています。
なので、その「自己実現の欲求」や「自己超越」の気持ちとブランドがリンクしたり、「考え方」や「価値観」に共感できるとそのブランドを応援したくなってしまいます。
そして、近いうち、人は機械によって多くの「労働」から開放されます。
大体のものがオートメーション化します。
そうすると、「自己実現の欲求」や「自己超越」などの「存在欲求」を求める傾向により拍車が掛かります。
より「心の幸せ」などの内面的価値に注目がいきます。
そういった「考え方」や「価値観」を作れる企業やブランドに「お金」も「人」も集まるようになります。
ここらへんは下記も一緒に読むとより理解が深まると思うので、参考までに。
ファンの「良い売上」が大事な時代
ファンの売上は下記の理由で大事です。
- 売上の大部分を占め、継続性があるから
- ファン化のプロセスを把握でき、4Pに活用できるから
- ファンとの取り組みが社員の働きがいにつながるから
- 推奨してくれ、新規顧客を連れてきてくれるから
ブランドに思い入れがなく良いインセンティブなどがあるとスイッチングしてしまうような売上を「悪い売上」とするならば、上記のような良いことがたくさんあるファンの売上は「良い売上」と言うことができ、非常に大事です。
特に④の「推奨してくれ、新規顧客を連れてきてくれるから」の部分は、この情報が伝わりづらい時代には重要です。
まずファンに伝え、ファンから伝えてもらうことが、情報に溺れるネットを日常的に使う人たちへ一番伝わる方法なのです。
だからこそ、ブランドの「考え方」や「価値観」に共感してくれるファンコミュニティを作り、いつでもコミュニケーションできる状態を作っておくことが大事なのです。
ではその「ファン化」のためには何が必要か。
そのヒントが「シンパシードミナントロジック」の中にあります。
「グッズドミナントロジック」と「サービスドミナントロジック」
「シンパシードミナントロジック」を説明する前に、「グッズドミナントロジック」と「サービスドミナントロジック」という概念について説明します。
こちらは2004年にロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴというマーケティング研究者が提唱した概念です。
グッズドミナントロジックとは
「グッズドミナントロジック」とは、ブランドによって作られた「モノ」か「サービス」が顧客の手に渡る瞬間に発生する交換価値の最大化を目指すという概念です。
なので、その交換の瞬間こそ「モノ」か「サービス」の最大の価値の瞬間であり、そこからは顧客によって価値が消化されていくイメージです。
クラフトビールのヤッホーブルーイングで当てはめて考えるのならば、「個性的な美味しいビールを提供することで価値の最大化を目指す」といったところでしょうか。
サービスドミナントロジックとは
「サービスドミナントロジック」とは、ブランドによって作られた「モノ」も「モノを伴ったサービス」とみなし、顧客がその「モノを伴ったサービス」や「モノを伴わないサービス」を体験することで生まれる価値の最大化を目指すという概念です。
なので、購買前も購買後も「サービス」と捉えることができ、どの瞬間にも体験価値最大化のチャンスがあります。
ブランドのみでは体験価値を実現できず、顧客が体験して初めて価値ができる、いわば価値を顧客と共創するイメージです。
クラフトビールのヤッホーブルーイングで当てはめて考えるのならば、「個性的な美味しいビールを通じて楽しいと感じてもらうことで価値の最大化を目指す」といったところです。
「グッズドミナントロジック」から「サービスドミナントロジック」へ
モノが溢れてしまったこの時代ではグッズドミナントロジックにある「モノ」や「サービス」の交換価値のみでの勝負では差別化が難しくなりました。
なので、ブランドはサービスドミナントロジックの概念で語られているような、購入前や購入後も顧客にブランド体験価値を提供していくようになりました。
(もっとも、「サービスドミナントロジックだ!」と意識して体験価値を作ったというよりは、ブランドは差別化を図ろうとして購入前や購入後の価値提供を自然と意識するようになったんだと考えられます。)
例えば、最近の月額課金の音楽配信サービスなんかはそれですよね。
使うことで好みを学習し、新しい音楽をレコメンドしてくれます。
「シンパシードミナントロジック」とは
時代背景で話したとおり、この時代は「心の幸せ」を本格的に求めだしている時代であり、ファンの「良い売上」が大事な時代です。
なので、そのブランドの背景にある「価値観」や「考え方」に共感してもらうことが非常に重要になってきます。
そういった意味で、ブランドの「価値観」や「考え方」に共感してもらう深さや量の最大化を目指すのが「シンパシードミナントロジック」の概念です。
「シンパシー」というのは文字通り「共感」という意味です。
クラフトビールのヤッホーブルーイングで当てはめて考えるのならば、「“ビールに味を!人生に幸せを!”という考え方に共感してもらう深さや量の最大化を目指す」といったところです。
「シンパシードミナントロジック」と「サービスドミナントロジック」
基本的にはどちらも重要だと思っています。
ベースとして「シンパシードミナントロジック」での「価値観」や「考え方」があり、「サービスドミナントロジック」での「サービス」を作っていく…って当たり前のことなんですが、「価値観」や「考え方」をもうちょっと顕著に意識して出していくイメージです。
「価値観」や「考え方」に共感してもらうために「サービス」を作るという。
そして、そのブランドの「価値観」や「考え方」に深く共感してもらう人を増やしていく、なんなら一緒に創っていくことが今後は求められます。
より一緒に深められる仲間を増やしていくイメージです。(ちょっと話はそれますが、個人も同じだと思っていて、そこらへんはキングコング西野さんなどは上手ですよね。あと個人ではないけど朝渋も上手。)
もちろん、ブランドの「価値観」や「考え方」に共感してもらう深さや量の最大化の手段は「サービスを作る」だけではないのです。
マーケティングだけではなく、広報や人事などにも大きく関わってきます。
特に顧客に直に向き合う「社員」こそブランドの「価値観」や「考え方」を一番に表したり顧客に伝えたりできる重要なファクターです。
だから社員にこそ、ブランドの「価値観」や「考え方」に共感してもらうことが大事となってくるのです。
まとめ
【グッズドミナントロジック】
ブランドによって作られた「モノ」か「サービス」が顧客の手に渡る瞬間に発生する交換価値の最大化を目指すという概念
【サービスドミナントロジック】
ブランドによって作られた「モノを伴ったサービス」や「モノを伴わないサービス」を体験することで生まれる体験価値の最大化を目指すという概念
【シンパシードミナントロジック】
ブランドの「価値観」や「考え方」に共感してもらう深さや量の最大化を目指すという概念
さいごに
「シンパシードミナントロジック」、こちらは親愛なるトライバルメディアハウスの田中陸也さんが提唱した「コミュニティドミナントロジック」に影響を受けて自分なりにまとめたものです。
陸也くんは「コミュニティ」にフォーカスしていますが、こちらでは「考え方」や「価値観」への「共感」にフォーカスを当ててみました。
「考え方」や「価値観」への「共感」を打ち出していくことこそ大事であると伝えることを重視しました。
そこがあって、結果的にファンコミュニティができていくイメージです。
陸也くんがまとめている通り、まずは「why」を意識し、打ち出していくことが大事。
陸也くんの「コミュニティドミナントロジック」を読むとより理解が深まると思うので、是非こちらもお読みください。
それと、共感(シンパシー)の先には共鳴(レゾナンス)があると思っています。
これからの記事ではそのシンパシーの高め方やレゾナンスについても書いていきたいと思います。
次の記事は『製品を飛び越えて企業のファンへ。ヤッホーブルーイングの”熱狂”の具体的な作り方とは』
例として取り上げさせてもらったヤッホーブルーイングはとても共感を得るのがうまい会社です。
その秘密をまとめた記事が下記となります。