「ブランドの既存顧客維持なんて意味ないからやらなくてよくて、新規顧客獲得に注力すべし!」と様々なデータでのエビデンスで殴りつけてくるバイロンシャープの著書『ブランディングの科学』『ブランディングの科学2』。
「マス広告でお金をかけて(1回買って終わりになりがちな)新規顧客を獲得するのも大事だが、今たくさん買ってくださっている既存顧客を大事にしてもっと買ってもらうのもコストも抑えられて良い!」と定説がある現代のマーケターの頭に氷水をぶちかけてくるような主張です。
既存顧客の中でもファンを大事にするようなマーケティングを推進している僕としてもスルーできない主張だったので、今回は時間をかけてこのバイロンシャープの2冊を読み解き、自分が考えるファンを起点としたマーケティングとの整理をしました。
2冊の要約⇒見解という構成になっています。
この2冊、非常に分かりにくい部分が多いと思うので、読んだ方は復習に、読んでない方でも彼の主張は分かるようにまとめたつもりです。
- 従来のセオリーを覆す11のマーケティングの法則
- 売上を伸ばすブランディング構築のための戦略的ガイドライン
など、代理店プランナーやブランド担当の方でマーケティングやブランディングに関わる方にとって知っておくべき主張も多いので、活用いただけたら幸いです。
目次
『ブランディングの科学』でバイロンシャープが述べていることの要約
まずは衝撃を与えられた1つ目のバイロンシャープの著書『ブランディングの科学』で述べられていることを振り返ります。
コトラーなどが唱えてきた従来のセオリーを覆す「11のマーケティングの法則」と僕が気になった「その他の提言」、それらを受けてブランドは売上を伸ばすためにどうしたらいいのかの「ブランディング構築のための戦略的ガイドライン」について要約します。
従来のセオリーを覆す11のマーケティングの法則
「20世紀のマーケティングを支配したコトラー派の理論にとって代わるべき」とバイロンシャープが自分で豪語する11のマーケティングの法則が下記です。
日本語訳の理解が難しいところもあるので多少補足を入れています。
1. ダブルジョパディの法則
シェアが小さいブランドは購買客数も購買頻度も感情的ロイヤリティも低い。
シェアが大きいブランドは購買客数も購買頻度も感情的ロイヤリティも高い。
⇒ブランドはまず市場浸透率を上げるべし。
※市場浸透率:特定の期間に何人がそのブランドを少なくとも1回買ったかを記録する指標。
(どのブランドも時間経過とともに上昇する。しかし、期間を2倍にしても市場浸透率は2倍にはならない。リピートによるものになるから)
2. リテンションダブルジョパディの法則
離反数はシェアと比例し、大きいブランドほど多くの顧客を失うが、その損失は顧客数全体と比較すると小さい。
(シェアが小さいブランドは離反数自体はシェアが大きいブランドに比べると小さく見えるがそのブランドからすると大きい損失になる)
(顧客離反率は、シェアが大きいブランドの方が低く、シェアが小さいブランドのほうが高い)
⇒ブランドはまず市場浸透率を上げるべし。
3. パレートの法則
上位20%の顧客によって40%~60%の売上が作られる。
(よく言われる80%ではない)
⇒ブランドはライトユーザーを獲得すべし。
4. 購買行動適正化の法則
ヘビーユーザーはライトユーザーに変化、ライトユーザーはヘビーユーザーに変化する。
この平均への回帰は購買行動が変化しなくても生じる。
(たまたま多く買った年にヘビーユーザーと分類されたり、ヘビーユーザーなのにたまたまその年は買わなくてライトユーザーと分類されたりするから)
例えば、数年経ってもブランド全体のヘビーユーザーの割合は変わらないが、中のユーザーは入れ替わっている。
⇒リピート率はブランド全体でならすと変わらないんだからブランドは新規顧客獲得で母数を広げて成長すべし。
5. 自然独占の法則
シェアが大きいブランドはそのカテゴリーのライトバイヤーの購入を独占するため、ライトユーザーの比率が大きくなる。
(カテゴリーのライトバイヤーは市場占有率の高いブランドを選ぶ傾向があるから)
シェアが小さいブランドはそのカテゴリーのヘビーバイヤーの購入が多いため、ヘビーユーザーの比率が大きくなる。
(カテゴリーのヘビーバイヤーは色々なブランドを買っているから)
⇒既存顧客の維持よりも新規顧客獲得に注力すべし。
6. 顧客基盤が類似する
競合ブランドの顧客基盤と自社ブランドの顧客基盤は非常に類似している。
⇒競合ブランドと同じターゲットにアプローチして良い。
もし自社ブランドがそのカテゴリーの顧客基盤の平均像とは違うターゲットに売れているとしたら、平均像にアプローチすることで成長の余地がある。
7. ブランドに対する態度と思いが行動的ロイヤルティに反映される
消費者は自分が使用しているブランドほど知識が豊富で多くを語るが、使用しないブランドについては考えることも語ることも非常に少ない。
従って、調査において、シェアが大きいブランドはロイヤルティの高いユーザーを多く含むので常にスコアが高い。
(この書き方、僕はおかしいと思っていて、文章から察するに「ブランドに対する態度と思いが行動的ロイヤルティに反映される」のではなく「ブランドの使用体験が消費者の態度に影響を与える」ということ)
(そして「シェアが大きいブランドはロイヤルティの高いユーザーを多く含むので常にスコアが高い」はn数的にはそりゃあシェアが大きいブランドのほうがたくさん出てくるだろうが、「ユーザーの平均の熱量」などであれば測り方によっては小さいブランドでもどうなるかわからない)
⇒まずは使用してもらうべし。
8. ブランド使用体験が消費者の態度に影響を与える
ブランドは異なっても、それぞれの購買客がブランドに対して示す態度と認識は非常に類似している。
(例えば「ママ」は誰にとっても「愛すべき存在」であり、「ときに煩わしい存在」。ブランドも同じ。)
⇒消費者はブランド間の差異をほとんど感じていなく、商品購入理由による差別化はブランドを購入する上では不要。それよりもそのブランドと識別されるブランドの独自資産(セイリエンス)である色・ロゴ・キャッチフレーズ・広告手法などが重要。
9. プロトタイプの法則
製品カテゴリーを的確に説明するイメージ属性は、そうでない属性と比較して、評価が高い。(ブランドとの関連性が高い)
10. 購買重複の法則
自社ブランドの顧客基盤はシェアに応じて競合ブランドの顧客基盤と重複する。
(自社ブランドと大規模ブランドとの顧客共有率は高く、小規模ブランドとの顧客共有率は低い)
もし、一定期間内にあるブランドの購買顧客の30%がブランドAも購入するとすれば、どの競合ブランドもその購買客の30%がブランドAを購入する。
(ちょっとこれは言い切り過ぎで全部が全部そうではないとは思う…)
11. NBDディリクレ
NBD=Negative Binomital Distribution=負の二項分布
カテゴリー内の購買客の購買頻度や購入ブランドについて、その傾向にどのような差異が生じているかを明らかにする数理モデル。
その他の提言
上記以外で僕が気になったバイロンシャープの提言を記します。
マーケターが「顧客の離反をコントロールすること」「高頻度購買客の購買行動を増やすこと」はほとんど不可能
購買行動適正化の法則からもわかるように、そういう習慣だから。
そして、離反のほとんどが転居、結婚、死亡など。4割くらいが他社サービスの良さで離反する。
(「サービスの良さで離反する」って言っている時点でコントロールできるのでは?と僕は思ってしまうが…)
ターゲティング(セグメント分けてアプローチ)なんぞ売上に貢献しない
自らニッチ(狭い市場)を狙いに行くと宣言しに行っているようなものであり、数々の研究結果から競合ブランド間の顧客プロファイルに大きな差はない。
⇒一般層に向けてできるだけ多くアプローチをする方が効率的である。
ブランドを熱狂的に支持するファンを重視すべきでない
どのブランドにも一定数ファンは存在するが、少数派であり、その数は競合他社に比べて大きく勝っているわけではない。
・満足を感じていない40%の人たちがハーレーの売上の約50%をもたらしている。
・ハーレー好きの典型的な特徴を持つ熱狂的な人々(熱狂的、タトゥ、ビール好き)は10%であり、ハーレーの売上の3.5%しかもたらしていない。
・口コミ宣伝効果も数が少ないから効果的でない。 しかも、新規顧客の方がブランドについて語る傾向がある。 (古参にとってブランドはもはやニュースとなり得ないから)
・コミュニケーションコストもかかる
売上を伸ばすブランディング構築のための戦略的ガイドライン
上記をうけ、じゃあブランドが売上を伸ばすブランディング構築のためにはどうしたらよいか、戦略的ガイドラインをバイロンシャープは7つのルールでまとめています。
1. できるだけ多くの人にリーチする
製品カテゴリー内のすべての購買顧客に流通、コミュニケーションの両面から継続的にリーチする。
2. 買い求めやすいこと
市場調査を行ない、ブランドを買い求めやすくする要因を理解して対策する。(特に「買わない理由」など)
3. 目立つこと
広告や販促活動で消費者にリーチすることができても、ブランドが認知されなければその効果は非常に低い。
知的で高感度の高いクリエイティブが必要。
4. 記憶構造を刷新、再構築する
広告や販促活動で消費者にリーチすることができ、ブランドが認知されても、記憶構造を刷新または再構築できなければ機能しているとは言えない。
既存のブランドが記憶構造を刷新、再構築するために新しいメッセージを発信しなくてもよく、これまでに見たことがあり記憶の中に定着した同じメッセージが効果的。
5. そのブランドならではの独自資産(セイリエンス)を構築する(ブランディング)
ブランドの独自資産(セイリエンス:色・ロゴ・キャッチフレーズ・広告手法など)を構築する。
理由1.消費者がブランドにロイヤルティを感じるから
理由2.ブランディングを行なうことで消費者の理解が進み、記憶構造が刷新されてブランド理解が促進されるから
理由3.記憶に定着しやすいから
6. 一貫性を維持しながらも新しさを失わない
一貫性のない広告に関心がなく、結びつかないから。
※パッケージ変更はブランド購入頻度の低いユーザーにとっては特に混乱を招く
7. 競合力を維持する(買わない理由を与えない)
・フィジカルアベイラビリティ(購買機会の高まり)
・メンタルアベイラビリティ(ブランド想起の高まり)
を高めて多くの人にリーチする。買わない理由を与えない。
『ブランディングの科学2』でバイロンシャープが述べていることの要約
次に2作目である『ブランディングの科学2』でバイロンシャープが述べていることを要約します。
基本的には前作の振り返りに加えて、前回より詳しく
- 独自資産(セイリエンス)の構築の仕方
- メンタルアベイラビリティの構築の仕方
- フィジカルアベイラビリティの構築の仕方
の解説がありました。
「新ブランドの場合」「高級ブランドの場合」上記をどうするかも記載がありましたが、今回は省きます。
独自資産(セイリエンス)の構築の仕方
STEP1. 賢明な選択
・ブランドの歴史を振り返り、優れたものを再活用
・ブランド資産の強みを数値化して戦略を練る
STEP2. 賢明な実行
・独自のブランド資産を持った上で、すべてのカテゴリーバイヤーにメッセージを届け、ブランド連想を構築する
・ブランド名とブランド資産が共存する最高の瞬間を伝える
・一貫性を維持する(バラついてブランド資産構築が遅れるので)
メンタルアベイラビリティの構築の仕方
シェアを維持するためにはカテゴリーエントリーポイント(CEP)の刷新が必要
そのカテゴリーの購買客が遭遇する様々な状況でブランドがどれほど想起されやすいかというきっかけ(カテゴリーエントリーポイント)とのリンクの幅と強さが必要。
(色々な文脈(CEP)とのリンクの広さと深さが必要。例えばマクドナルドは今、朝でも昼でも夜でもない「小腹が空いたとき」という新しい文脈を「ちょいマック」で作ろうとしている。)
メンタルアベイラビリティを意識した広告メッセージのコツ
・ブランドに着目させる独自資産(セイリエンス)を構築する
・どのCEPに反応したかを確認し、なるべく広いCEPを選択
・カテゴリーのライトバイヤーにもブランドのライトバイヤーにも明快か
・最後に利用したCEPと別のものを検討すると良い効果がもたらされる可能性
・生産国を利用して有益なら利用すればいいし不利益だったら遠ざける
(例えば、オランジーナはフランスを利用。Appleは中国を不利用。)
・ターゲットを絞りすぎてスケールメリットを損なったりせずに、できるだけ多くの人たちに意味ある魅力的な広告や商品を提供
(その秘訣は消費者の共通点(CEP)を探すこと。要は消費者の文脈の最大公約数を攻めるということ。)
フィジカルアベイラビリティの構築の仕方
ブランドを目立たせて買いやすくするフィジカルアベイラビリティの3要素を伸ばす。
1. プレゼンス (ブランドに存在感があるか)
流通ルートや小売店の選択などブランド配下に係る判断に影響を与える「プレゼンス」を伸ばすポイントは下記。
●購買が起きる場所と時間に適切に対処する
●ブランドに合わせて販売チャネルを考える
伝統的なチャネルと現代的なチャネル、両方考える
2. レレバンス (ブランドは買い求めやすいか)
ポートフォリオ選択の判断に影響を与える「レレバンス」を伸ばすポイントは下記。
●商品やサービスは次の基準を満たす設計にする
・製品の選択肢が豊富であること
・人口が増えつつある地域では競合に勝つための製品選択肢を増やす
・市場の成長に伴い、主要なサブマーケットでの製品選択肢を増やす
・顧客基盤が小さい高価格帯の製品を作る時は、過度の集中とカニバリを防ぐ
●購買を妨げている原因を取り除く
・品揃え
・価格帯
・支払い方法
3. プロミネンス (ブランドは目立っているか)
購買環境の中でブランドの存在感を高める「プロミネンス」を伸ばすポイントは下記。
●独自のブランド資産(強いビジュアルデザインなど)で目につきやすくする
ブランドは既存顧客維持を捨て新規顧客獲得に注力すべきか?バイロンシャープへの見解
ブランドの成長に新規顧客の獲得が重要なのは100%同意
シャープが『ブランディングの科学』でも『ブランディングの科学2』でもずっと述べている「ブランドの成長に新規顧客の獲得が重要」という考えには100%同意であり、そのやり方として、「売上を伸ばすブランディング構築のための戦略的ガイドライン」に記されている「メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティを高めて、ターゲットを絞らずできるだけ多くの人にリーチ」という手法にもぐう同意です。
最近のワークマンの例が分かりやすいと思うんですが、「職人向けの商品だと思っていたらキャンパーが使っていた、妊婦さんが使っていた」みたいにブランド担当が考えるペルソナ的想像を超えてお客さんって色んな文脈(本書でいうCEP)でそのブランドを使っていたりするんですよね。
(そのヒントはファンからこそ拾えると思っているのですが、それは後ほど述べるとして)
だからこそ、ターゲットを絞らずできるだけ多くの人にリーチし、リーチできた人の頭にブランドの独自資産(セイリエンス)でブランド識別してもらってメンタルアベイラビリティを高め、高めておいたフィジカルアベイラビリティで買いやすくする。
新規顧客獲得は確かにこの流れをマーケターは意識すべきだと思います。
ブランドの成長に既存顧客の維持が必要ないのは同意しかねる
だからといって、新規顧客の獲得だけやっていれば良くって既存顧客はないがしろにして良いっていう考えには同意しかねます。
感情的にもそうしたくない。今買ってくれているお客さん(特に既存顧客の中でも感情的ロイヤリティが伴うファンの方)こそ大事にしたい。
いったん感情は置いておいたとしても、具体的には「マーケターが顧客の離反をコントロールすることはほとんど不可能」「ブランドを熱狂的に支持するファンを重視すべきでない」ということは違うと思っています。
ブランドの成長に既存顧客の維持が必要ないに同意しかねる理由は3つあります。
理由1. 上位20%の既存顧客によって40%~60%の売上が作られているのは事実だから
従来考えられていた「上位20%の既存顧客によって80%の売上が作られている」が成立していないとはいえ(成立しているブランドもある。実際は業態業種、ブランドの状況によって割合は変わる。)、既存顧客によって多くの売上が作られていることは事実なので、ないがしろにする理由はないと考えます。
理由2. 「もっと買いたい」と思ってもらう仕組みは作れるから
「マーケターが顧客の離反をコントロールすることはほとんど不可能」とバイロンシャープは言っています。
確かに、CRM的な取り組み(購買頻度に合わせて1to1のメールアプローチとか)には限界があるとは思っています。
なぜなら、そもそもメールなどのプッシュ通知はもう見られずらいし(LINEでさえプッシュ通知は見られずらい時代)、見たとしてもインセンティブでの購買促進には限界があります。費用も非常にかかり本当に効果と見合うかはあやしいところがあります。
しかし、CRM的な取り組み以外にもリピート率や離反率を改善する仕組みは作れます。
例えば、僕の大好きなイケウチオーガニックは作っている人たちも、使っているファンの人たちも素敵で、その仲間に入りたくて僕は買い続けている部分があります。(イケウチオーガニックには社員さんのことが分かる「イケウチの人たち」や使っているファンの方を紹介する「イケウチな人たち」、オンラインで接客を受けられるイベントなど、好きになってしまう仕組みがたくさんある。)
つまり、感情的ロイヤリティへのアプローチです。
感情的ロイヤリティ(図では熱狂度)とLTV(図では収益度)に相関があることはトライバルメディアハウスさんのデータからも見て取れます。
出典:熱狂的推奨者実態調査 2016
「愛しているから買い続ける。」
それはもちろんプロダクトの機能的価値で実現できることが理想ですが、購入後や購入前の仕組みを作ることで感情的ロイヤリティを形成しリピート率や離反率を改善することも可能だと考えます。
また、バイロンシャープは「ブランドの成長のためにはライトユーザーのうち何%かはヘビーユーザーになる必要がある」と述べています。
つまり、ブランドとしては既存顧客にせよ新規顧客にせよ「もっと買いたい」と思ってもらう何かが必要なわけです。
バケツに大きな穴があいたままでは水はたまらない一方。その穴を小さくすること、僕はCRMに加え、感情的ロイヤリティを高めることでできると考えています。
理由3. 口コミはファンの熱量こそ起爆剤だから
バイロンシャープからも「メンタルアベイラビリティの構築のためにも必要」と述べられている口コミ。
しかし、シャープからは「ファンの口コミは数が少なく宣伝として効果的ではない。新規顧客の方がブランドについて語る傾向がある。」と述べられています。
ファンの口コミは数が少ない。そういうブランドも多いかもしれません。しかしながら熱量が違います。ファンの口コミには広さがない分、深さがあるんです。(もちろんブランドによって広さがある場合もあります。)
そして今の時代、そのファンの数少ない口コミをマスに展開する手段は自社メディアやSNSなどたくさんあります。
ブランド側がファンの熱量を拾って広げてあげれば良いのです。
例えば、キヤノンはTwitterで「#キヤノン党でほめあいたい」というオリジナルハッシュタグをもってファンの熱量ある口コミ投稿を起点に公式が広めて盛り上げています。
キヤノン公式とユーザーでほめあって盛り上がれるオリジナルハッシュタグがあることで、キヤノンのカメラで撮影したファンの熱量ある良い写真を投稿してもらい、ファンの口コミ投稿を公式が引用RTで13万人に紹介しています。
(そして紹介がファンには嬉しく投稿が増え、そのファンの熱量に触れライトユーザーの投稿も増えるのです。)
ファンの熱量こそブランドの独自資産(セイリエンス)となるのではないか
ファンの熱量、感情的ロイヤリティを高めるメリットは4つあります。
- ファンの売上が上がる
- ファンの熱量を4P活用できる
- ファンの熱量が社員のモチベーションを上げる
- ファンが推奨してくれる(口コミ)
詳しくは下記でまとめています。
今回注目したいのは②と④。
イケウチオーガニックの例はまさに「②ファンの熱量を4P活用」です。
ファンの熱量をウェブサイトで紹介しマスに広げる、つまり4PのうちのPromotionに活用したわけです。
例えば、ワークマンの「ファンと商品開発」はファンの熱量を4PのうちのProductに活用した事例です。
また、ファンの熱量を傾聴することによってCEPの発見にもつながります。(ワークマンでいう「職人向けの商品だと思っていたらキャンパーが使っていた、妊婦さんが使っていた」の発見。)
そして、キヤノンの例は「④ファンが推奨してくれる(口コミ)」です。
ファンの熱量ある口コミ投稿が起爆剤となり、さらなるファンやライトユーザーの投稿につながり、メンタルアベイラビリティを高め新規顧客獲得につながるわけです。
バイロンシャープは「ブランドを熱狂的に支持するファンを重視すべきでない」の主張の際、「ハーレー好きの典型的な特徴を持つ熱狂的な人々(熱狂的、タトゥ、ビール好き)」を例に出しましたが、このようなファンがいるというハーレーのイメージこそブランドの独自資産(セイリエンス)なのではないでしょうか。
そのブランドのファンという存在、熱量、感情ロイヤリティこそブランドの独自資産(セイリエンス)であり、そちらを起点にメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ、更には感情的ロイヤリティを高め、新規顧客獲得・既存顧客維持を行なっていけば良いと考えます。
見解のまとめ
ブランドの成長のためには新規顧客獲得・既存顧客維持が共に必要。
ブランドのファンこそ独自資産(セイリエンス)であり、そのファンの熱量を起点に4P活用や推奨(口コミ)を促進するなどでメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ、更には感情的ロイヤリティを高め、新規顧客獲得・既存顧客維持に活用できる。
※もちろん、多くの人にリーチできるマス広告での新規獲得や時にはCRMでの既存顧客維持も効果的。
さいごに
めちゃくちゃ整理するの難しかったんですが、なんとか自分の中ではまとめられてスッキリしました。
自分の信じている道はバイロンシャープが信じている道と共存できる、いやむしろ相乗効果で良い結果を生める気がします。
ずっとファンを起点としたマーケティングを否定されているような気がして(実際否定されているんだけど)気が重かったんですが解消されそうでよかったです。
あと何より、ファンとの取り組みって素敵なんですよね。社員のモチベーション上がるのも分かるっていうか。
それで満足するのは違うと思うんですが、人としてそういう心の喜びみたいな部分っていうのは大事にしながらプランニングしたいと思っています。
じゃないとそのブランドが存在する意味とは?自分が存在する意味とは?となっちゃいそうで。
マーケティングにもっと愛を取り戻せるように(そしてもちろん売上も伴えるように)これからも取り組んでいきたいと思います。
次の記事は『愛と売上を作るファン起点マーケティングのまとめ』
ファンを起点としたマーケティングの考えを下記にまとめています。
よかったら参考にしてみてください。